恋がしたい、君と

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朝、ぼんやりとNHKをみていたら、先日バン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さんが生出演していた。NHKホールで演奏した2曲(録画)を挟みながら、インタビューを受けるという内容。
そのインタビューの中で彼は、「ショパンは今の自分と同じ歳の頃には、好きな女性がいて、その人のために作曲していた。自分も恋がしたい。そして、その女性に捧げる曲を作曲したい。」というようなことを話していた。
そのキラキラした空気。一瞬で目が覚めた。

「恋がしたい。」ステキな言葉だ。
憧れやときめきが、ギュッと詰まってる。しかも、自分が作った曲を、その女性に捧げたいとまで。良い悪いは別にして、「やりたい。」「彼女が欲しい。」「婚活がんばる」というのとは、若干違うと思う。

確かに、芸術家たちはにはミューズの存在が必要だ。彼の言う、ショパンのミューズは、ジョルジュ・サンドだろう。デザイナーだってそうだ。言わずとしれたエルメスのバーキン、カルチェのサントスやパシャ、イヴ・サン・ローランにはカトリーヌ・ドヌーブ、ユーベル・ド・ジバンシィのオードリー・ヘップバーン。
新しいものが次々に生まれ、時代が移り変わっても、結局は、たった1人の為に愛を込めて作られ、捧げられたものが、長く残るのだ。

辻井さんが「全盲でピアノを弾けるなんてすごい!」、という部分ばかりが、メディアで取り上げられているけど、私はそれが、ものすごく特別な事だとは思わない。以前、通っていた手話教室で、全く耳が聴こえないのに、日本舞踊を曲にあわせて、完璧に踊ることができる女性に会った時、そういう驚きはなくなった。それに、産まれたときから見えない(聴こえない)のであれば、見える(聴こえる)世界と比較しようがないではないか。その代わり、集中力や、他の器官の働きは、他の人より人間よりも突出している。人間は、繊細かつ合理的に、できている。
ただ、おそらくは、ものすごい努力があっただろうし、ご両親の大変さはあったと思うが、その部分を微塵も感じさせず、「ピアノを弾くのは楽しいので、一度もつらいと思ったことはない。」と言い切る姿、裏舞台を見せない姿に、プロ意識を強く感じた。

彼のミューズになるのは、どんな人だろう。聴いている人の心を揺さぶり、一瞬たりとも聞き逃したくない、と感じさせる、そんな彼の演奏を、ある意味独り占めできるだ。
彼の才能を刺激しつつ、安定した精神状態を保つ手伝いをしなくてならない。創作意欲を引き出し、愛され続けるのが仕事だ。それには、自分の引き出しを常にストックしなくてはいけない。
なかなか大変だけど、人には、そういう生き方もあるのだ。
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by privatecafe | 2009-06-24 20:12 | OTHERS...