ほろ苦い春

a0007078_1722388.jpg
菜の花を初めて食べたのは、小学生の時だ。同じクラスに、代々専業農家、というA子ちゃんがいて、その子のお母さんが、食用菜の花を、朝、学校に届けてくれたのだ。
先生のはからいで、その日の給食に菜の花は出された。そのほろ苦い味は、産まれて初めての体験で、ホント、美味しかった。

菜の花を届けてくれたA子ちゃんのお母さんは、それからすぐ亡くなった。
小学校卒業前、親参加の、クラスのお別れ会があったのだけど、その時、A子ちゃんはお父さんに対して、お礼の作文を読んでいた。「お母さんはいなくなってしまったけど、お婆ちゃんとお父さん、私と弟で、仲良くがんばっていきましょう。」っていう内容だったと思う。お父さんは、泣いていた。

その後、私たちが中学生になった時、A子ちゃんのお父さんは再婚した。友人からその話をきいた時、私の第一声は「ふ〜ん。」だったのだけど、「実は、再婚相手って、亡くなったお母さんが生きてた時からつき合っていた人なんだって。」って言われた時は、言葉が続かなかった。

今だったら・・・、そう、今の私だったら、"自分も大人になってしまった狡さ"で、「そういうことも、あるかもね。生きている人は、人生を楽しむ権利があるのだから。」って、あっさり思うだろう。でも、その時は純だったので(?)、A子ちゃんのこと、彼女のお父さんの涙のことを、ごちゃごちゃと考えた・・・。
それからも、A子ちゃん家族にはいろいろなことがあって、噂を聞くたびに、私は、やっぱり、ごちゃごちゃと考えた。

いつしか、噂もきかなくなり、彼女のお父さんの泣き顔も忘れてしまった。けれど、春になって、店頭に菜の花が並べてあるのを見ると、決まって心がザワザワする。
笑顔で教室をのぞいていた、A子ちゃんのお母さんのこと。皆が菜の花を美味しそうに食べるのを、喜んでいたA子ちゃんのこと。そして、人の心の弱さや脆さ、移ろいについて、ぼんやりとわかりはじめた、自分自身のこと。
それらを思い出して、少し、切なくなるのだ。
[PR]

by privatecafe | 2007-02-19 17:09 | OTHERS...